すでに10前後の民間の実施団体と協議中というが、それぞれの試験によって英語の何を測るのかが違う。たとえば、英検やTOEICは英語そのものを理解しているかどうかを試す。一方、TOEFLは英語コミュニケーション能力を測る。レベルも目的も違うのに、いったいどうやって公平に判定するのだろうか。

 そもそも今の文科省の英語教育は、目的がはっきりしない。本気で英語を学校で教えたいのか、教えたいなら何のために教えたいのか、全くわからないのだ。つまり、英会話ができるようにしたいのか、英語の本や新聞、テレビ番組、映画が理解できるようにしたいのか、それともグローバルなビジネス現場で使える英語力を身につけさせたいのか、ということである。

 コミュニケーションの道具としての英語が目的ならば、○×式の試験をしていること自体、逆効果だ。たとえば、母親が子供に言葉を教える時に「間違えたら叩く」なんてことをやっていたら、子供は言葉を学ばなくなってしまうだろう。

 明治時代の英語は、基本的に「英文和訳」だった。西洋の書物や新聞を読んで理解するための英語だったからである。また、私が中学生・高校生の頃は外国人と英語の手紙をやり取りする「ペンパル」が盛んだったが、それは「和文英訳」でよかった。つまり教養としての英語、素養としての英語であり、いわば「英語学」だ。文科省の英語教育は、そういう時代のままである。

 しかし、それでは世界に出ていった時にビジネスの交渉はもとより、生活することさえままならない。

 もし、そこから脱して国際的なビジネス現場で通用する英語力を養いたいのであれば、海外で実際にビジネスマンが遭遇する様々なシチュエーションに対処できるだけの実践的な教育に転換しなければならない。

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