それらの実践的な英語は、英文和訳や和文英訳をいくら練習してもできない。英検やTOEICが高得点でも関係ない。結局、文科省がやろうとしているのは「実学」としての英語ではなく、「受験科目」としての英語でしかないのではないか。
もしグローバルなビジネス現場で使える英語を身につけたいなら、外国人観光客のツアーガイドがお勧めだ。たとえば、鎌倉の大仏を案内する時に「This is the Great Buddha in Kamakura」では3秒で終わってしまう。そうではなく、大仏が野ざらしになっている理由や、巨大な大仏の鋳造方法、貴族政治から武家政治に移行した鎌倉幕府の時代背景などを説明できなければ、外国人観光客を喜ばせることはできない。そのためには「教養」が必要なのである。
折よく、東京オリンピックを前に、通訳案内士の資格がなくても有償でガイドができるようになった。これは国民全員参加で英語力を鍛える絶好のチャンスだと思う。
もし、文科省が日本人の英語力を世界標準レベルに引き上げたいなら、民間の英語試験でお茶を濁すのではなく、大学の大半の授業を英語化するくらいのドラスティックな改革を断行すべきである。
※週刊ポスト2017年7月7日号