「フィンランドで40~50代の被験者の睡眠時間と、その後の認知症リスクを調査した実験では、睡眠時間が7時間未満の人の発症リスクが7~8時間の人の1.59倍だったという結果が出ています」(医療経済ジャーナリスト・室井一辰氏)
睡眠負債とがんリスクの関係にも注目が集まる。東北大学が2008年に公表した2万2000人の男性の追跡調査結果では、睡眠時間が7時間未満の男性は、7~8時間の男性に比べて、前立腺がん発症率が1.38倍高いことが明らかになった。『Nスペ』にも出演して警告を発した睡眠評価研究機構代表・白川修一郎氏はこういう。
「大腸がんの発症リスクは、睡眠時間が長いほど低くなることがわかっています。がんと睡眠負債の関係については解明されていない部分も多く、今後の研究が待たれるところですが、がん細胞などを攻撃する免疫機能のはたらきに悪影響を与えることが関係すると考えられています」
さらには睡眠負債によって、血圧や血糖レベルが高まるリスクも指摘されている。高血圧や糖尿病といった生活習慣病への罹患リスクが高まるということだ。白川氏が続ける。
「体内のホルモンバランスに影響を与え、肥満につながると示唆する研究もあります。2004年のスタンフォード大の研究では、5時間睡眠の人は8時間睡眠の人と比べて、血中グレリン(食欲を増進させるホルモン)が14.9%増加し、血中レプチン(食欲を抑えるホルモン)が15.5%減少すると報告されました。
また国内の研究では、男性約2600人を8年間追跡調査した結果、不眠症状が続くと2型糖尿病の発症リスクが2~3倍高くなるとする結果が出ています」