それは経営陣が、人事の重要性を理解していないからである。このため、上司が部下を評価するために資料を残す際、きちんとやったら数日はかかるはずなのに、1時間ほどで10人分をいい加減に書いているというパターンがほとんどなのだ。
言い換えれば、その社員が来年1年間はどんな努力をすべきなのか、何が達成されたら上のレベルの仕事ができるようになるのか、というキャリアプランとキャリアパスがそもそも存在しないのである。これでは適材適所の人事などできるはずがない。だから日本企業では往々にして、上司に対するおべんちゃらがうまい太鼓持ちタイプや腰巾着タイプが、能力に関係なく高評価されて出世する。
自社の「人的資源」を最大限に活用するためには、経営トップが人事に相当な時間を費やさなければならない。
たとえば、今回退任が決まったGE(ゼネラル・エレクトリック)のジェフリー・イメルトCEOは毎週金曜日の夜は必ず、将来のリーダー候補250人の中の1人と1対1で夕食を共にしている。250人全員と会食するためには5年かかるわけだが、その結果、イメルト氏の頭の中には、誰がどのような経験をしてきたのか、どういう仕事が得意なのか、人品骨柄はどうなのかといった一人ひとりの詳細なプロファイルが出来上がる。それを基に彼は250人を50人に、さらに50人を3人に絞り込み、後継者を育てていく。これはジャック・ウェルチ前会長のやり方を踏襲したものであり、GEが優良企業であり続けている理由がそこにある。