もちろん企業は「社会の公器」であり、社会的責任(CSR=企業が事業活動を通じて自主的に社会に貢献する責任)があるから、それを重視するのは大切なことだ。しかし、私が考える21世紀の「良い会社」の本質的な条件は違う。
経営コンサルタントを40年以上にわたって務めてきた経験から言えば、その会社が「良い会社」かどうかは、経営者の時間配分を見れば、だいたいわかる。
経営者が社内の制度改革やシステム作りに多くの時間を使っている会社は、良い会社になる可能性が高い。一方、経営者がメディアに取り上げられやすい企業戦略やM&Aばかりを考えている、あるいは経済団体活動などの対外的なことに多くの時間を使っている会社は、良い会社である可能性が低い。
とくに、経営者が人事制度を疎かにして時間を使っていない会社は、良い会社にはならないと思う。だが、残念ながら日本企業の大半はそうなっているのが実情だ。
たとえば、私はコンサルティングを依頼されたら最初に人事ファイルを見せてもらうのだが、ほとんどの会社は入社時にどこの部署に配属され、その後どこの部署に異動したかということくらいしかわからない。その部署でどんな仕事をして、どのような成果を出したか、同僚や部下との関係はどうだったのか、何を改善してどんなスキルを身につけたらよいのか、といった具体的な評価と課題が全く書いていないのだ。