35年ローンが「発明」されたのは1960年代だと言われている。おそらく高度経済成長に沸いた昭和40年頃だろう。住宅の価格もうなぎ上りに上昇していた。「これでは誰も家が買えないじゃないか」という絶望感が庶民の間に広がっていた。

 そこへ救世主のように登場したのが35年ローンだ。35年という長期にならせば、毎月の返済額は家賃程度に抑えられる。これによって、多くのサラリーマンはマイホームの夢を諦めずに済んだわけだ。実際に、35年ローンによって家を買った人は多かった。

 しかし、もはや35年ローンの役割は完全に終わった。というよりも、サラリーマンを破滅に追い込むシステムに変貌しつつある。その理由は、ここまで申し上げてきたとおり。

(1)35年の安定収入を見込める者はごく少数
(2)住宅価格は今後右肩下がりで下落していく

 この二つに尽きる。そして、この二つの条件が今後覆る見通しは少ない。

 2015年の労働者派遣法改悪に見られるように、今後正規雇用の割合が増えるとは思えない。人手不足と逆行するように、企業は派遣社員などの非正規雇用への労働力シフトを強めるはずだ。

 日本全体の人口が減る中、都心エリアなど一部を除き住宅への需要は萎みつつある。その証拠に5年ごとに調査される空家率は徐々に高まっている。それでも新築住宅は一定数供給されるので需給関係はますます悪化する。今の局地バブルが終了したのちは、住宅価格の下落傾向は都心近辺にまで及ぶはずだ。したがって35年ローンで住宅を購入した場合、支払いが不能となれば最終的には自己破産に追い込まれてしまう。

 35年ローンというシステムは直ちに廃止すべきだろう。それにはまず、銀行が「最終返済時75歳」という根拠不明のルールを改めるべきだ。サラリーマンに融資する場合は「最終返済時60歳」とすべきだ。40歳の人なら「20年返済」が限度となる。自営業者なら定年がないので「最終返済時65歳」でも構わない。

 次に、日本もノンリコースを取り入れるべきだ。返済ができなくなれば、担保の住宅を差し出せば返済義務をすべて免除、というのがノンリコース。アメリカなどで多く採用されている。その代わり、金利負担は重くなる。当然だ。

 そもそも、何千万円ものお金を1%未満の低金利で借りられることが異常なのだ。それを35年もの長きにわたって「返せる」という幻想を抱く消費者も、抱かせる不動産業者や銀行も異状だ。今は高度成長期の昭和ではない。

 日本は平成の世から次の時代へと変わると同時に、この時代遅れも甚だしい35年ローンという無責任な住宅購入システムを破棄すべきだ。

 破棄できないのなら、せめて個々人が利用を避ければよいと思う。そして、自分の定年にあわせた返済期間でローンを組むべきだ。「家賃くらいの返済額になるから」などという理由で、安易に35年ローンを組んではいけない。そんなことをすれば、人生のどこかで自己破産の危機を迎えることになる。

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン