【著者に訊け】杉江松恋さん/『ある日うっかりPTA』/KADOKAWA/1404円
【本の内容】
それは2008年2月15日にかかってきた1本の電話から始まった。〈「もしもし、杉江さんですか。(中略)推薦委員会の嶋本と申します。実は──」〉。PTA会長を引き受けるか、引き受けないか。そして引き受けて以降、次々と持ち上がる難題や内部のいさかいに右往左往しながらも、一つ一つ解決していく様子は爽快感がある。「中に出てくることは全て事実。かなり赤裸々に書いています。だから、地元の書店で本が売れてるのがわかると、中に出てくる人たちにバレるんじゃないかってヒヤヒヤする(苦笑)」(杉江さん)。
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PTAの活動経験がないのにうっかり引き受けた会長職。驚きの連続だった3年間の奮闘を、ライターで書評家の杉江さんが、トラブルも隠さず、ありのままを振り返った。
「初めてやるのに会長、っていう人は結構いるみたいです。役員経験者は大変だと知ってるから、知ってる人ほど会長をやりたがらない。新しい人から、ぼくみたいなおっちょこちょいを探してくることになるんですよ」
PTAの経験こそなかったものの、学童保育の保護者会や、読み聞かせのボランティアに参加していたので、「適性あり」と目をつけられていたのだろう。当時の杉江さんは金髪・ヒゲ・サングラス姿で、別の意味でも目立っていたはずだ。
「妻にも、『結婚したとき、あなたがPTA会長をやる人だなんて思わなかった』って言われるんです。髪だけは黒く染めてほしいと前任者に頼まれ、短く切りましたけど、別に金髪だっていいじゃん、と今でも思っています」
「PTAの常識」として列挙される事柄が面白い。任意であること、教師も入っていることなど知られていないことも。先入観のない杉江さんは、変だな、と思うことは変えていった。
「『なるべく手を抜こうね』というのが、当時の校長とぼくとの間でできた合意で(笑い)。役員の人たちとも、減らせる仕事は減らしましょう、と言ってました」
好奇心から引き受けた会長職。本を読むと、どことなく楽し気でもある。
「サークル活動っぽくしたくて。楽しい仕事ではないけど楽しい一面もどこかにはあるはず。でないと『やらされてる感』でいっぱいになっちゃいますから」
仕事柄、杉江さんは自分で時間を調整できたが、勤めている人は半休を取らなければならない。働く女性も増えて、PTAはたいへん、という印象は強い。
「ぼくのやってたころが端境期で、今はもう少し忌避感が強いかな。情報が何もないのに引き受けなきゃならない、というのがいちばん大変なので、『自由参加でいい』とか、いろいろなことが共有されるようになるといいです」
(取材・文/佐久間文子)
※女性セブン2017年8月17日号