拙速な理解や表面的知識にとどまらない知的興味こそを教養と呼ぶ山口氏は、本書にもルビをほどこし、音読習慣の復活を目論む。
「昭和16年に活版屋さんがルビ用の活字を金属として軍に供出して以来、日本では総ルビの本が消え、音読が廃れる一因になったらしい。今は戦争もないし、お勧めは風呂場での音読。喉も痛まないし、よく響く」
ゆっくり言葉と向き合う時間が真の教養に繋がるとはしみじみ平和は有り難い。
【プロフィール】やまぐち・ようじ/1963年佐世保市生まれ。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。文学博士(中国学)。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員として「欧州所在日本古典籍総目録」の編纂、パリ国立国会図書館で敦煌出土本の調査等を手がけ、現在大東文化大学准教授。著書に『日本語の奇跡』『ん』『カタカナの正体』等。2016年『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。165cm、68kg、O型。
■構成/橋本紀子
※週刊ポスト2017年8月18・25日号