〈主人は亡くなる寸前まで「俺は本当に幸せだ。宝物の2人の部屋で、コンピュータと写真に囲まれ、○○(奥さんの名前)に見守られて、最期まで手料理も食べることができて、もう思い残すことはないよ」と何度も申しておりました。この言葉を聞いた時、2人の最期の決断は正しかったと確信しました。昨年10月、入院中の余命宣告は、「年を越せないかもしれません」でした。迷っていた私を救ってくださったのが、小笠原先生のお言葉でした。私はあの時、先生から頂いたお電話での話は一生忘れません。

「ご主人の体がそんな状態なのに、これ以上、いつまで抗がん剤を続けるつもりなの? 奥さんは、主人はまだ大丈夫!となぜか心の中で思っている。でも、本当は一日でも早く退院させてあげないと、ご主人には時間がないんだよ。私が最期まで診てあげるから大丈夫。早く決断してご主人を退院させてあげなさい」

 私たち夫婦と家族みんな、心から小笠原先生へ感謝しています! だからこそ、亡くなった今も、何一つ悔いなく、やり通せた満足感だけが残っているのだと思います。主人が私の目の前で、朝食のコーヒーを飲んでいる時、眠るようにスゥーと息をしなくなった瞬間、自分が動揺せずに、大声も上げずに、主人の脈を確認して、心臓に手を当てて、音がしないことを確認していました。私がこんなに冷静でいられたのも在宅医療のおかげです。悲しくて寂しいけれども、先生と家族一緒に笑顔でピースできたのはやり切ったから!(後略)〉

 小笠原さんは本書「あとがき」でこう綴っている。

〈「ご愁傷さま」ではなく「笑顔でピース」。今の日本の常識では考えられないかもしれませんが、「笑顔で死ねる、笑顔で看取れる」としたら、なんとめでたいご臨終でしょう〉

※女性セブン2017年9月7日

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