少なく見積もっても年金減額は4000億円以上。そんな巨額な特別利益がありながら、決算報告書にも統計にも記載されていないのは重大な問題ではないか。そもそも、厚労省が在職老齢年金の正確な数字を持っていないのはどう考えても不自然だ。
年金の受給システムは国民が受給手続き(裁定請求)を行なった時点で毎月の年金額(裁定額)が決まり、在職中の人は給料に応じて年金が減額されて振り込まれる。厚労省(日本年金機構)の年金コンピュータには一人一人の裁定額と実際の支給額が記録されている。それこそワンクリックで支給カットの総額も人数も計算できるはずだ。
本誌が改めて年金局の年金局事業企画課調査室に在職老齢年金のデータを求めると、年金局内をあたったらしく、数理課の担当者から「当方で対応します」と資料が出てきた。そこには、2014年度末の在職老齢年金の「対象者数及び支給停止額」として驚くべき金額が記載されていた。
〈60~64歳 約98万人 約7000億円〉
〈65歳以上 約28万人 約3000億円〉
1000億単位とは何とも雑などんぶり勘定であることはさておくとして、約125万人の働く高齢者から、毎年約1兆円もの年金が召し上げられていたのである。
◆積立金にまわしている
なぜ、この数字を隠していたのか。数理課の担当者はこう“弁解”した。