「在職老齢年金の支給停止額は定期的に集計しているデータではなく、あくまで政府の審議会で必要になった際に、そのつど算出している。資料は内閣府の高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会(7月18日)の討議資料として集計したもので、前回出したのは3年前の社会保障審議会年金部会でした。次の集計も決まっていません。年金年報に記載することになっていないから、調査室は調べたことがないと誤解したのでしょう」
この『高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会』こそ、年金75歳選択支給に向けた議論を行なっている内閣府の有識者会議であり、本誌は政府が年内に年金受給開始年齢の引き上げ(選択制)を盛り込んだ高齢社会対策大綱を閣議決定する可能性が高いと報じてきた。
その会議に提出する資料のために、年金局がわざわざコンピュータを回して高齢者への年金減額で「毎年1兆円」の年金財源が生まれているデータを弾き出した。
その動きからは、政府の議論の裏に、高齢者をできるだけ長く働かせることで、もっと多くの年金を返上させて財源を増やそうという狙いが読み取れるではないか。年金会計の決算書に1兆円の不払い額(特別利益)が計上されていないのにもカラクリがあった。
「在職老齢年金の支給停止額は最初から払わなくていいものとして年金会計の歳出予定額に計上していない。予想より多くの支給停止があった場合は、年金積立金に回しています」(年金局総務課)
政府はこれまで「年金など社会保障費の伸びが毎年1兆円に達している」と国民に窮状を訴え、高齢者の年金をカットし、保険料を値上げし、さらには消費税まで増税した。