●名言その3
「開明に進まんとならば、 先ず我国の本体を居え、 風教を張り、然して後徐かに 彼の長所を斟酌するものぞ」
(現代語訳)
これから、わが国も世界の先進国を目指そうというのなら、まずは、わが国の“わが国らしいところ”を、しっかりと固め、国民の道徳心を高めて、そのあと外国のよいところを、ゆっくりと取り入れていくことです。
【解説】
“わが国らしいところ”とは、突き詰めれば「国体」の一点にしぼられます。西郷さんは、まずはそれに基づいて政治や社会の体制を確立し、その上で「国民の道徳心」を高め、そのあと欧米の文物をゆっくりと取り入れればよい、と言うのです。そうせず性急に「外国のマネ」に走ったら……、西郷さんは「国ごと外国に支配されて、生きていかなければならなくなる」と警告しています。
●名言その4
「正道を踏み、国を以て斃るるの精神無くば、外国交際は全かる可からず」
(現代語訳)
正しい外交を進め、それを真っ直ぐに貫き、“その結果、国ごと斃れることになってもよい”という覚悟を持ち続けることです。そうでなければ、外交を立派になしとげることなど、とてもできません。
【解説】
ぎりぎりの交渉で、こっそり逃げ道を用意していると、相手に手の内を見透かされ妥協を引き出せず、結果的に最悪の事態になるでしょう。“最悪の事態も辞さない”という覚悟で交渉に臨む時、はじめて相手も真剣に交渉に応じ、やがては、それが最善の結果をもたらすのです。そのような交渉を、西郷さんは生涯に何度も成功させています。
解説■松浦光修(皇學館大学文学部教授)
※SAPIO2017年10月号