芸能

野際陽子さんの女優魂「病気だからと出演シーン削らないで」

主宰する演劇の稽古などが行われる倉本聰さんのアトリエ

 今年4月からスタートしたドラマ『やすらぎの郷』(毎週月~金曜昼12時半~、テレビ朝日系)が、いよいよクライマックスを迎える。立案者であり、『やすらぎの郷』の脚本家・倉本聰さんは、居を構える北海道・富良野でドラマにかける思いを語った。

 6月に井深凉子役の野際陽子さん(享年81)が肺腺がんで亡くなった。末期は撮影現場で酸素チューブをつけながらも、女優としての強い信念で出演シーンを撮りきったという。

「去年の8月に脚本が上がったときは、病気のことは全然知らなかった。凉子がジョギングする場面で“実は肺を半分取っていて走れないの”と言われて、その時に知ったんです。“病気だからと出演シーンを削らないで”と、最後までおっしゃっていたし、周囲には病気を微塵も感じさせない演技は立派でした。

 でもね、本当はもう少しせりふがあったんです。7シーンぐらい書き替えました。野際さんには一応お伝えして、(加賀)まりこ(73才)にせりふを回したりして。“野際さん、このせりふは言いたかったろうなぁ”というのは随分ありました。書き直しながらつらかったですよ。彼女の気持ちを思うとね。

 制がん剤治療はやめたと聞かされた後も、撮影はまだ残っていて、山家で菊村栄(石坂浩二・76才)と芥川賞の結果を待つシーン(第108話)が最後のでっかいシーンです。野際さんはウイットに富んだ人でね、“濃野佐志美”なんてペンネームを使う凉子をおもしろがっていましたよ」(倉本さん・以下「」内同)

 今年1月には同時代を駆け抜けてきた“戦友”の脚本家・山田太一さん(83)が人知れず脳出血に倒れ、『週刊ポスト』で「もう脚本が書けないかもしれない」と、断筆宣言ともとれる告白をした。

「太一さんの病気も全然、知らなかったんです。残念だけど…(しばらく言葉に詰まる)、またなんらかの形で創作はできるんじゃないですかね。でもね、“書かないからといって作家じゃなくなった”とは言えない。作家の行動というものがありますから。死に方ひとつも作家の死に方があるし、生きざまとどれだけ結びついているか、ということです。非常に残念な気持ちもありますが、こっちだっていつどうなるかわからないから。

関連キーワード

関連記事

トピックス

松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン