努力の結晶として最高峰の世界に到達した。周りに居並ぶ一流を見れば見るほど、負けず嫌いの血が騒ぎ、「『ああ、くそ』とか、『勝ちたい』という気持ちは今まで涸らしたことがない」と語る。
そんな則本が目指すのは、自身が子供の頃に憧れたプロ野球選手の姿だ。
「松坂大輔さん(ソフトバンク)が真っすぐを投げて、中村紀洋さん(元近鉄)や松中信彦さん(元ソフトバンク)がフルスイングで応える姿を見て、僕はプロ野球選手になりたいと思いました。今の時代でもそういう野球を追い求めている人がいると信じているので、勝敗以外のところでもファンを魅了したい気持ちがすごくあります」
プレイボールからゲームセットまで力を込めて投げ、三振の山を築いていく。1球の威力、140球を全力で投げ抜くタフネス、みなぎる気迫をすべて備えているから、現代では珍しい本格派として君臨することができる。
「自分の体が続く限りはそういうタフさを出していきたいと思います」
誰にも真似できないようなスタミナを身につけ、誰よりも多く三振を奪うのが唯一無二のスタイル。則本だからできるピッチングを貫いているからこそ、ファンはこの男に魅了される。
◆のりもと・たかひろ/1990年滋賀県生まれ。三重中京大4年時の全日本大学野球選手権で20奪三振を記録。2012年ドラフト2位で楽天に入団し、史上3人目となる新人での開幕投手を務めた。15勝を挙げて新人王、チーム初の日本一に大きく貢献。2014年以降は3年連続でリーグ最多奪三振をマークしている。2017年には日本代表としてWBCに出場。4月19日の西武戦から8試合連続二桁奪三振の日本記録を樹立した。
●撮影/本誌・藤岡雅樹 取材・文/中島大輔
※週刊ポスト2017年9月29日号