松田さんは石材店に永代供養墓と墓の撤去工事を申し込むと同時に、寺に意思を伝えたが、「お寺とのやりとりがいちばん気を使う大仕事だった」と話す。
「高い離檀料を請求されたらどうしようと不安でした。もめずに終わらせたくて、1対1で話し合いました。住職には驚かれましたが、墓を守り続けられない事情を丁寧に説明すると、最終的に認めてくれました。離檀料は払っていません」
行政手続き上必要となる申請書の記入も面倒だった。
「老眼だし、普段は縁のない書類ばかりでしょ? 本当に苦手。不備があったら戻ってきてしまうしね。石材店がサポートしてくれたので、事務所に行ってその場で教えてもらいながら、頑張って書類を書きました」
試練を乗り越えながらも手続きは順調に進み、松田さんにとって最後のイベントとなる墓の工事も終えた。
「業者さんが流れ作業のように、墓石を壊して遺骨を取り出すだけだと思っていたので、夫の遺骨を見せてほしいとお願いするつもりでした。でも何も言わないのに、見せて説明してくれたんです。とてもうれしかったです」
実行に移してから3週間もかからず、すべて完了。今後、遺骨は大阪市の永代供養墓に合祀される。
◆夫もきっと理解してくれるはず
子供がおらず墓を継ぐ人がいない松田さんは、最初に一定の金額を払うと、墓地の管理者が永代にわたり供養してくれる永代供養墓を選んだ。他の人と一緒に入る合葬式だが、墓があるので今後もお参りできる。
「逆の立場なら、私は夫に『もう永代供養で充分よ』って言いますよ。夫もこの決断を理解してくれていると思う。私自身のお墓の形はこれから考えていきます」
※女性セブン2017年10月5日号