ライフ

江戸無血開城、西郷が英国の抗議を大義名分として利用し実現

上野公園の西郷隆盛銅像(昭和初期) 共同通信社

 西郷隆盛を「維新三傑」たらしめる最大の功績といえば、慶応4(1868)年の「江戸無血開城」が挙げられる。旧幕府側の本拠地が無抵抗で明け渡されるという、新政府軍の優勢を決定づけた象徴的な出来事である。

 倒幕強硬派として新政府軍を率いた西郷は、江戸城総攻撃を翌日に控え、旧幕府側代表・勝海舟と会談。そこで方針を180度転換し、独断で攻撃中止を決断した。それにより、江戸市民150万人は戦禍を免れ、維新は加速したのである。

 強硬派・西郷を翻意させたのは、当時横浜にいたイギリス公使パークスだったとする説がある。新政府軍に、「恭順の姿勢を示した者に戦争を仕掛けるのは認められない」と抗議したというのだ。『西郷隆盛伝説の虚実』の著書がある歴史家の安藤優一郎氏は、こう解説する。

「実際にパークスの抗議があったことは史料に残っています。しかし西郷は、パークスの抗議を『攻撃中止』の大義名分として利用したにすぎません。中止を決断した最大の理由は西郷の『武士の情け』です。

 西郷の残した功績をみれば、その本質は政治力であり、交渉の巧さだと言える。江戸城総攻撃計画は旧幕府側から最大限の妥協を引き出す切り札だったと考えられます。しかし、この独断により新政府内に西郷不信の種を蒔くことになってしまいます」

◆取材・構成/浅野修三(HEW)

※SAPIO2017年10月号

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン