映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、84歳の現在も映画と舞台の双方で活躍を続ける俳優・仲代達矢が語った言葉を紹介する。
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今回も前回に引き続き、筆者が仲代達矢に出演作品の舞台裏や演技論・芸談についてうかがったインタビュー本『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』(文春文庫)から、印象的な「言葉」を抜粋していく。
仲代のキャリアを振り返ってみると、映画と舞台の双方で大きな実績を残していることに気づく。これは、自身が意図的に選択した役者人生であった。
「前にやったのと同じような役をやるのは避けたかったんですよ。映画会社に専属してスターになると、一つ当たると次から次へ同じものが来る。役者になる前から映画を見ながら『外国の役者はどうして作品によって変わっていくんだろう』ということをいつも考えていました。
そこへいくと日本の役者は、一つ当たるとずーっと同じようなイメージの役をやる。やっぱり作品によって変わっていったほうが面白いだろうなって、なんか無意識の中にあったんですよ。
それから、やっぱり私は芝居が好きで。苦労してお金にならなくても、一年の半分は芝居をやると。それで、残りの半分を映像にするつもりでいました。だから、年の前半は映像の世界に出て、六月でピタリと止めて、後半は通行人の役でも芝居をやると決めていたんです。たとえその時に映画主演の話があっても振り向かない、と」
「十代はメチャクチャどん底だったものですから、金は欲しかったんですが、金に対する不信感みたいなものもありました」「若気の至りっていえば若気の至りですけど、やっぱりどこかダイナミックに生きてみたいなって気持ちがあったんです」