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「征韓論」の真実は「西郷が自ら外交問題を解決したかった」

上野公園の西郷隆盛銅像(昭和初期) 共同通信社

 維新の英雄・西郷隆盛が一転、「逆賊」となるきっかけになったのが「明治六年の政変」だ。板垣退助ら政府参議の半数と、軍人・官僚ら約600人が辞職した。その発端は西郷隆盛が主張した朝鮮使節派遣(征韓論)である。

 一般的に征韓論は、西郷が不平士族の不満をそらすため、武力をもって朝鮮に国交を開かせるものだったと言われている。『西郷隆盛伝説の虚実』の著書がある歴史家の安藤優一郎氏が語る。

「西郷が朝鮮へ行きたがっていたことは間違いないでしょう。しかし、巷間言われるように、武力で威嚇し、自分が殺されることで戦争のきっかけを作ろうとしたわけではない」

 それを裏付けるのが明治6(1873)年10月、西郷が提出した「朝鮮派遣使節決定始末」である。その中で西郷は「護兵の儀は決して宜しからず」と、兵隊を引き連れない平和的な使節を派遣することが先決であると述べているのだ。

「当時、西郷は明治天皇から医師を派遣されるほど体調が悪く、自身最後の仕事としてあくまでも平和的に外交問題を解決しようとしていたのです。しかし、留守政府において影響力と存在感を増していた西郷を、大久保利通や岩倉具視らは面白く思っていなかった。

 彼らの強硬な反対に遭った西郷は、身体的・精神的に不安定だったこともあり、生来の血気盛んな性格が前面に出てしまい、西郷をはじめとする参議5人らが下野する政変へと追い込まれたのでしょう」(安藤氏)

◆取材・構成/浅野修三(HEW)

※SAPIO2017年10月号

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