外交は、圧力ばかりでは成り立たない。同時に、対話が求められる。何をしでかすかわからない相手ほど、パイプを通しておくことが必要だ。

 15年前、小泉元首相が北朝鮮を突然訪問したが、その準備は1年前から田中均アジア大洋州局長(当時)が水面下でパイプをつくっていた。こういうテーブルの下の話し合いが大事なのだ。

 今後さらに北朝鮮への制裁が厳しくなっていけば、金組長はミサイルや原爆をイスラム過激派集団に売るだろう。こうなったら収拾がつかなくなるが、金組を倒すのはアメリカではない。この国の国民だ。20年はかかるだろうが、時間をかけて国民の洗脳を解き、人権の守られる平和な国に変わっていくのを待つしかない。

 そんななか、参議院議員のアントニオ猪木氏が32回目の訪朝をした。菅官房長官に「全ての国民に北朝鮮への渡航の自粛を要請している。この政府の方針を踏まえ、適切に対応すべきだ」と訪朝を見送るように求められたが、「ホウチョウ、イッポン~」とギャグを飛ばして、訪朝を決行した。

 この人、もっと演説がうまいといいのだが、けっこういいことも言っている。

「どんな場合でもドアを閉めるべきでない、どこかのドアを開けておくべきだと前から言い続けてきた。できれば何とか緊張状態から対話の方向に向かえばと思っている」

 Jアラートで硬直する日本の空気をほぐすのが、猪木の必殺技だけというのはちょっとサビシイ。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『検査なんか嫌いだ』『カマタノコトバ』。

※週刊ポスト2017年10月13・20日号

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