「ぶどう農家の後継ぎ問題も含め、ワイン製造に関わる就業人数が根本的に少ないことが深刻な問題になっています。今後の商業的な展開は大手企業が入らなければ期待できません。
また、ワイン原料となるぶどうも品質に応じて十分な値がつけられる農産物として扱われなければ、従事者は増えてこないと思います。ワイン製造は夢だけではやっていけないので、高品質な日本ワインの製造サイクルが確立するまでは、まだまだ時間はかかるでしょう」
さらに、日本ワインを息の長いブームにするためには売り方の難しさもある。メルシャンのマーケティング部長である森裕史氏がいう。
「ここ数年、チリ産ワインがブームの牽引役となっていましたが、500円前後での低価格販売や、ラベルに描かれた動物で消費者を引き付ける戦いに集中してしまい、ワイン売り場の楽しさが失われてしまいました。
その結果、多種多様なワインの魅力がコモディティ(画一)化し、チューハイなど飲みやすい他のカテゴリーにシェアを奪われるといった現象も起きました。日本ワインについては、国産ならではの魅力をもっと我々が伝えていかなければなりません」
これまでは、濃縮用のぶどう果汁を輸入して国内で加工したワインに「国産」としていた時代があったが、来年からは日本で栽培されたぶどうを使い、日本で生産されたワインだけを「日本ワイン」とする表記の厳格化も図られる予定だ。
果たして、良質化する日本ワインがどこまで生産量を伸ばし、国内のみならず世界中の“ワイン通”を唸らせることができるか。