かつては、夏に学生をターゲットにしたキラキラの青春ドラマを放送していましたが、近年それでは視聴率がとれなくなってしまいました。しかし、いじめ、スクールカースト、学級崩壊、モンスターペアレンツ、教師の不祥事などの学校問題は、大人にとって身近な関心事であることに変わりありません。これらの学校問題と向き合うために、「秋に大人をターゲットにした見応えのある社会派ドラマとして放送しよう」という流れが生まれているのです。
ポイントは2作の主人公が、先生や生徒ではなく、校長とスクールカウンセラーであること。『先に生まれただけの僕』は櫻井翔さんが校長役、『明日の約束』は井上真央さんがスクールカウンセラー役を演じています。これは「先生や生徒という当事者ではなく、保護者に似た第三者の目線で学校問題に向き合う」ためでしょう。
事実、前述した夏の学園ドラマは、強烈な個性の先生と、将来有望な若手俳優たちが華やかなムードを醸し出していましたが、今秋の2作にはそれがありません。学園ドラマの魅力であるフレッシュさや明るさはなく、どこか不穏なムードがただよっています。
もともと「読書の秋」「芸術の秋」と言われるこの時期は、ドラマでも行間を読むような作品へのニーズが高く、脚本家たちもオリジナルの力作を書き上げる傾向があります。『先に生まれただけの僕』の脚本家は、『HERO』(フジテレビ系)、『CHANGE』(フジテレビ系)、『DOCTORS』シリーズ(テレビ朝日系)などを手がけた福田靖さん。『明日の約束』の脚本家は、『任侠ヘルパー』(フジテレビ系)、『37歳で医者になった僕』(フジテレビ系)、『ウロボロス』(TBS系)などを手がけた古家和尚さん。両者とも骨太なテーマをエンターテインメントに昇華させる名手だけに、学校問題を真正面から扱った上で、視聴者をどう楽しませるのか楽しみです。
◆初回から鋭く問題を切り取るシーンが続出