ライフ

概要書発売された日本最古の医学書、不妊の治療法も明記

にわかに注目が集まっている「『医心方』事始」(藤原書店刊)

 日本には有形文化財のうち、国宝に指定されているものが約1000件ある。そのなかで、日本に現存する最古の医学書とされているのが『医心方』だ。この6月に、概要書ともいえる「『医心方』事始」(藤原書店刊)が発売され、にわかに注目が集まっている。

『医心方』では、女性の体や妊娠、出産にまつわる記述が多い。

「占相篇」(巻二十四)もその1つ。「胎児の性別を知る方法」(同第三章)、「生れた子の寿命の占い方」(同第五章)など、スピリチュアルな面が強くフィーチャーされている中で、「不妊の治療法」が紹介されている。

 現在、不妊治療中の女性は国内に約40万人とされ、大きな関心を集めるテーマだが、医心方では不妊について《男性あるいは女性のどちらかの病気による場合は、すべて薬や食物によって効果を得ることができる》(同第一章、以下《》内は『医心方』・筑摩書房刊より引用)と主張している。そのうちの1つが次の方法だ。

《桃の花がまだ咲ききらないうちに摘んで百日間、陰干ししてから搗ついて粉末にし、(中略)酒で服用せよ》(同)

 薬剤師で漢方サロン『アイカ製薬』の大久保愛代表が続ける。

「古くから桃は生命力が強い植物と考えられていて、魔除けの作用もあるといわれていました。現代では桃の種子で代用することが多いですが、『白桃花』という生薬には血行不良の改善効果があり、不妊治療にも効果があると考えられています」

 生命の誕生は、まさに神秘の類だったのだろう。そのための手段であるセックスもまた、大きな意味をもつ行為として綴られている。

「房内篇」(巻二十八)は、1巻まるまる男女の交わりを説いている。

《初めて交接する時には、(中略)女性は男性の左側に寝て、男性は右側に寝る。こうして枕を並べてから、女性を正面にあおむけに寝かせ、足をひろげ、臀をのばして、男性はその上にうつぶせになり、女性の股の内側にひざまずく》(同第五章)

《男女が正しい方法で交接すれば、福徳がもたらされ、大いなる聖人や善人が天から胎内に託される》(同第二十一章)

 そして受精の成否についてはこんな「サイン」も登場する。

《女陰に射精したとき女体が初めから力強く男性の性器を吸いこむのは、受胎の兆候である》(巻二十四第二章)

 めでたく妊娠した後に注意すべきことも、事細かに説かれている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン