壇蜜を唖然とさせた作品『一刻:皿に秋刀魚』(前原冬樹・作)
山下:歯の治療に使う針を工夫して彫刻刀として使うなど、道具からオリジナルで作っているそうです。骨が欠けているのは失敗したからかもしれませんが、かえって食べかけのリアルさが出ています。
壇蜜:秋刀魚は小骨まで食べられますものね。それにしても木とは思えない。秋刀魚そのものですね。
山下:作者は東京藝術大学の油画科出身の前原冬樹さん。油絵の具を使うことで、皮身からジュワッと滴る脂の感じや焦げ目なども実に生き生きと表現されているんですね。彼は32歳で藝大に入学していますが、元プロボクサーでサラリーマンも経験している。しかも彫刻は独学です。
壇蜜:その異色の経歴からこの精巧な秋刀魚が生み出されたとは!
山下:技術はもちろん、コンセプトが際立ち、センスもある。そうした優れた現代の作家を紹介することが、今回の特別展『驚異の超絶技巧!』の目指すところです。
壇蜜:この蛇のバッグも独創的で目を引きますね。蛇はまだ生きているのかなと思うくらい、生々しさが漂っていて……。わっ、こちらの作品は七宝焼きなんですね。
山下:七宝の技法で、蛇革の1枚1枚の鱗をかたどっています。作品名は『反逆』。バッグにされた蛇が飛び出して人間に逆襲している。