「追い越し車線って、高速道路で最もスピードが出て、最も危険な場所でしょう。そこに無理矢理止めさせておいて、危険運転致死傷罪が適用できないとは…。法律は常に後手です。尊い犠牲の上でやっとできた危険運転致死傷罪が充分に機能を果たしていないのだとしたら、当事者にとっては無念極まりない」
◆現行法の不備を正すべく議員も動き出す
一方、こうした被害者遺族の声を受け、現状を変えるべく立ち上がる人もいる。参議院議員の三原じゅん子(53才)もその1人。「危険運転致死傷罪を考える超党派議員の会」の一員である三原は、今回の事故についてこう語る。
「事故にあわれましたご遺族のお子様たち、ご家族の皆様のお気持ちを案じると言葉が見つかりません。過失運転致死傷罪での逮捕について、私個人としては疑問を持っていますし、法律が現実に追いついていない部分があると思っています」
三原は2012年に京都府亀岡市で起きた、無免許の居眠り運転による交通死亡事故の遺族と会い、その悲痛な胸中と法改正への強い要望を真摯に聞いてきた。
「問題を解決できるのは、われわれ政治家だと考えています。超党派の議員連盟では、交通事故ご遺族の皆様がたからのヒアリングや法務省、警察庁などとの議論を繰り返し、それらの政策研究が2013年の自動車運転死傷行為処罰法成立に結びつきました。
日本は罪刑法定主義なので、法律に明記している犯罪でなければ裁くことはできません。たとえば、悪意を持って事故を誘発させる危険行為である『高速道路上の停止強要』という項目を法律に追加するなどして、現行法の不備を正していくべきです」
風見が言葉を振り絞る。
「もし神様に1つだけ願いを叶えてあげる、と言われたら、あの日の事故が起きる前に戻してもらいます。そして、命がけで守る。でも、そんなこと現実には起こりえない。だったらせめて、えみるの死を無駄にしないためにも、1つでも2つでも、10でも20でも、“次の犠牲”がなくなってほしい。天国のえみるもきっと、そう願っているはずです」
※女性セブン2017年11月9日号