同社の全23施設は、福岡に本社を置く創生事業団が運営を引き継ぐとしていたが、8施設に関しては家賃交渉がまとまらなかったため、事業を継承しない方針を発表した。
その8つの老人ホームに入居していたのは約340人。幸い、破産申請から約3か月が経ち、ほとんどの人に転居等の見通しが立ったというが、倒産による混乱は入居者たちに相当深刻な影響を与えていた。
受け入れ先の一つとなった老人ホーム「花さとか」(旭川市)の西海明道代表は、こう振り返る。
「転居を迫られた人たちの家族から問い合わせが入り、まとめて見学にも来ました。通常は終の棲家と考える人が多いので、入居するかを1~3か月はかけてじっくり決めていくもの。
ところが『ほくおう』は9月中には退去しなければならないということで、見学に来た時点であと10日くらいしかなかった。そうして転居を決めた人たちのなかには、“眠れない”“他の人と話が合わない”と不安を訴える方が少なくありません。
受け入れる私たちも、一人ひとりの既往症やご家族、生い立ちなどの情報をスタッフ全員で共有する時間が足りないし、入居者が増えたぶん残業や休日出勤が増えた。増員しようと求人広告を出しても、誰も面接に来ない。人件費と広告費が3倍増で、正直苦しいです」
一つの倒産によって、入居者にも家族にも、そして同じ地域の介護者にも負担がのしかかるのだ。
※週刊ポスト2017年11月10日号