【1】一般に「指導」と考えられている教員の行為により、子供が精神的あるいは肉体的に追い詰められ、自殺すること。
【2】指導方法として妥当性を欠くと思われるものでも、学校で一般的に行われる行為であれば「指導」と捉える(些細な行為による停学、連帯責任、長時間の事情聴取・事実確認など)。
【3】自殺の原因が「指導そのもの」や「指導をきっかけとした」と想定できるもの(指導から自殺までの時間が短い場合や、他の要因を見いだすことがきわめて困難なもの)。
【4】暴力を用いた指導が日本では少なくない。本来「暴行・傷害」と考えるべきだが、これによる自殺を広義の「指導死」と捉える場合もある。

 学校は、えてして外界と隔絶された閉鎖的な空間になりやすい。その中では、人間関係やいじめに悩む子供が唯一頼れる大人が教員だ。ところが池田中のケースでは、その教員こそが自殺の原因になるという最悪の事態を招いてしまった。

「文科省の発表と合致しているかは定かではありませんが、私たちが把握している昨年度の指導死の数も3件です」(前出・大貫さん)

 前述した池田中のケースに加え、昨年5月、東京・大田区の自宅マンションから中1の男子生徒が飛び降りたものと、今年2月、愛知・一宮市の中3の男子生徒が大阪市内の商業施設の7階吹き抜け部分から身を投げたものだという。

「前者は、学校にスナック菓子を持ち込んだことについて指導を受けた日の夜に自殺しています。後者は、日常的にプリント配りや雑用を命じられていたうえ、クラス全体が騒がしいにもかかわらず当該生徒だけを怒鳴るといった行為があったとされています。男子生徒が死の直前に友人に預けた携帯用ゲーム機には“担任によって学力、存在価値、生きがい、性格、私の人生すべてを壊された”というメッセージが残されていました」(全国紙記者)

 これはもはや「指導という名の教師によるいじめ」に他ならないのではないか。前出の大貫さんは、指導死の背景には「教員が抱えるストレスがある」と指摘する。

「長らく“教師は聖職者”といわれてきましたが、1人の人間です。体調が優れない日もあれば、気分の浮き沈みもあります。加えて、最近の教育現場では恒常的に予算や人員不足が起きています。そんな中でも、勉強に限らず、さまざまな面で高水準の教育を施すよう求められることが、教員の精神的負担になっています」(前出・大貫さん)

 全国学力テストでトップクラスに位置する教育県の福井にあって、池田中は上位を維持していた。手厚い補習授業が行われ、教職員は休日出勤も厭わなかった。

「過剰な労働を強いられてストレスがたまった教員が、明らかに範囲を逸脱した厳しい指導に走ってしまう。そうして、子供を自殺へと追いやってしまうんです。さらにいえば、教員からの行きすぎた指導は、今度は子供たちをストレスにさらし、非行やいじめといった別の問題を引き起こします。そういった意味では、指導死といじめは密接な関連があるともいえるのです」(前出・大貫さん)

※女性セブン2017年11月16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン