国内

俵万智 絵本の魅力は絵が動かず豊かな想像力が育まれるところ

絵本の魅力を語る俵万智さん

 少子化、出版不況といわれる時代に今、“絵本”が売れている。その秘密は、絵本を楽しむ大人が増えたことにあるようだ。子供の頃は気づかなかった、でも大人になった今だからわかる絵本の魅力がある。1児の母であり、歌人の俵万智さんが、絵本の思い出を語る。

 * * *
 3才の頃、母がよく読み聞かせてくれたのは『三びきのやぎのがらがらどん』。オノマトペがとても豊かで、声に出して読むのが楽しかった。丸暗記できるほど、母が繰り返し読んでくれたのを今でも覚えています。

 がらがらどんという名前、それぞれのやぎが橋を渡る時の音、最後の“チョキン、パチン、ストン”など、子供の時は言葉の響きがおもしろかった。

 私が息子によく読み聞かせたのは、『花さき山』。民話風の言葉遣いで、優しいことをすると花がひとつ咲く。切り絵が印象的で、物語もとても美しい。小さな息子によく読み聞かせた一冊です。いいことをすると、お金持ちになれるとか、お姫様と結婚できるとか、そういう目に見えるご利益ではなく、人知れず花が咲くというところが素晴らしい。息子に、「あなたの花は、咲いていると思う?」と問いかけると、そのたびに話が弾みました。「幼稚園でお友達がこぼした牛乳を拭くのを手伝ったから、白い花が咲いている」とか。

 息子とは生後半年頃から、一緒に絵本をめくりながら遊びました。頻度は、ほぼ毎日、毎晩。気をつけたのは、「別に上手に読まなくていいし、忠実に読まなくてもいい」ということ。子供がまだ知らない言葉が出てきたら、かみ砕いたり、飛ばしたりもしましたし、何か話しかけてきたら中断してもよし。同じページをせがんだら、何度でも読みました。よかったのは、本が好きな子供に育ったこと。親子の会話も弾み、スキンシップ同様の、心の安定や繋がりを生んでくれたと思います。

 絵本の魅力は、絵が動かないところ。だからこそ、子供は自分の頭の中で絵を動かし、豊かな想像力が育まれると思います。また、肉声のぬくもりもいいですね。わが家では、子供がよく絵本の登場人物に話しかけてきて、私が成り代わって返事をするなどの遊びにも発展しました。テレビやDVDではそのようなことはできません。受け身ではない活用ができるのも、絵本のよさではないでしょうか。

※女性セブン2017年11月16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン