国内

三橋貴明氏 財務省のデタラメな緊縮財政路線に騙されるな

エコノミストの三橋貴明氏

「国の借金は1000兆円超え。国民一人当たりに換算すると830万円もの借金を持っている計算になる。子や孫につけ回してはいけない。このままでは財政破綻するので、消費増税やむなし」──こんなロジックは、大新聞やテレビのニュースなどでさんざん流されたから、それを鵜呑みにして「増税やむなし」と受け入れている人も多いのではないか。ところが、このほど『財務省が日本を滅ぼす』(小学館刊)を上梓したエコノミストの三橋貴明氏は、「すべて財務省の大嘘。デタラメなレトリックに騙されるな」と警告する。著者の三橋さんに話を聞いた。

 * * *
──三橋さんは以前から「日本は財政破綻などしない」と仰っています。

三橋:中央銀行(日本銀行)保有の国債について政府が返済や利払いをする必要はありません。日銀は政府が55%の株式を握る子会社だからです。現在、日本政府のバランスシートを見てみると、確かに負債の部には1100兆円を超える負債はある。ところが資産の部には672兆円もあります。しかも、そのことを絶対に財務省は公表しようとはしない。負債の部にある「公債」「政府短期証券」のうち、500兆円は日銀保有なのです。連結決算すれば、相殺されてしまう。

 それでも、政府の負債残高が気になるならば、償還期限が来た日銀保有国債について、新たに発行する「無期限無利子国債」と交換してしまえばいい。無期限・無利子国債は、事実上の貨幣です。政府は日銀が保有する国債と貨幣を交換したことになり、返済負債が名目的にも消えてしまう。ギリシャの場合はEUに加盟し、ユーロを自国で発行する権限を持っていない。だから破綻した。ところが日本の場合はまったく違います。日本政府の自国通貨建て国債など、その程度の話です。おかしいのは現在、日銀の黒田東彦総裁が財務省の財務官時代に日本の格付けを途上国以下にした外国の格付け会社に対し、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議している。その一方で、日本国民にたいしては財政破綻を匂わすのだからわけがわからない。

──三橋さんが問題にしているのは、「プライマリーバランス(以下PB)黒字化目標」です。

三橋:とにかく、PB黒字化目標が『骨太の方針』にて閣議決定されている以上、すべての政策がPB黒字化前提になってしまう。すなわち、「支出は前年比で削減する。増える場合は他の支出を削るか、若しくは増税する」という前提で予算が組まれざるを得ません。

──デフレ脱却できていないのに増税やら緊縮財政とは普通に考えておかしい。

三橋:政府が「政府最終消費支出(医療費、介護費、教育費、防衛費など)、及び「公的固定資本形」(公共投資から用地費等を除いたもの)を拡大し、デフレキャップを埋める。これが過去に効果が確認された唯一のデフレ対策です。ところが、2014年4月に5%→8%に消費増税してしまったばかりに、民間最終消費支出は2013年度から2014年度にかけて、8兆円も減った。物価上昇に給料の伸びが追いつかず、実質賃金も下落し、結果的にデフレへと逆戻りしてしまった。それどころか2015年には介護報酬を2.27%、診療報酬を1.03%カットしてしまった。衆院選挙が終わったと共にさらなるカットをほのめかしている。財務省の緊縮財政路線です。安倍政権は、(実は1997年の橋本政権期からだが)財務省の支配下に落ちたといっていい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン