脳の動脈の一部が、瘤や風船のように膨らんでいるのが脳動脈瘤だ。くも膜下出血の最大原因が脳動脈瘤破裂で、瘤が大きくなることで圧が高まったり、動脈瘤の血管壁が薄く脆弱になると破裂のリスクが上昇する。近年、受診者が増えている脳ドックで、症状のない未破裂脳動脈瘤が見つかる率は1~6%。発生原因は不明だが、中高年以上で家族に脳動脈瘤がある場合は、発生リスクが高くなる傾向にある。
昭和大学病院脳神経外科の水谷徹教授に話を聞いた。
「2012年、国内で大規模な脳動脈瘤の自然破裂率に関する調査結果が発表されました。脳動脈瘤の発生場所と大きさで年間の破裂率を割り出したものです。大きさが3~4ミリメートルの動脈瘤に比べ、7~9ミリメートルでは3.4倍、10~24ミリメートルでは9倍、25ミリメートル以上では76倍も破裂率が高くなっています。7ミリメートル以下の比較的小型の動脈瘤でも、前交通動脈や後交通動脈に生じた動脈瘤は、破裂率が高いことがわかりました」
未破裂脳動脈瘤の治療については、大きさが3ミリメートル未満では破裂の可能性が低く、経過観察を行なう。3ミリメートル以上の大きさの動脈瘤の治療は、開頭によるクリップ治療とカテーテルを挿入し、脳動脈瘤の中にコイルを留置する2種類がある。どちらの治療を選択するかは、動脈瘤の大きさと場所による自然破裂率、年齢や合併症、治療の安全性などを総合的に考慮して判断する。治療の安全性に関しては、術者の技量にもよる。
カテーテルによる血管内治療は、開頭しないので痛みが少なく、左右両側に2つの脳動脈瘤が発生していても治療が可能だ。しかし、動脈瘤の内側にコイルを留置しても、容積率は約30%しか埋まらずに隙間ができ、そこから血液が流入し、約10%は再発治療の可能性がある。また動脈瘤の間口が広い場合は、コイルの留置が難しい。血管内にステントを留置してコイルと組み合わせることで治療も可能だが、抗血小板薬を飲み続ける必要がある。さらに治療中にガイドワイヤーが動脈瘤の壁を突き刺し、くも膜下出血を起こすリスクもある。