「毎年120~130人の選手が戦力外となりますが、一般企業への就職を希望するのは約1割です。野球界の仕事は単年契約も多く、福利厚生の有無を含めて、不安定です。いつまたクビを切られるかわからない。私は一般企業への就職を希望する選手の割合を増やしていきたいという強い思いがあります」
元甲子園のアイドルで、宮崎の都城高校から南海にドラフト1位入団(1985年)した田口竜二(白寿生科学研究所総務部人材開拓課長)は、プロ野球選手の心情に寄り添ったセカンドキャリア支援を行っている。
「戦力外通告を受け、進路に悩んでいる選手がいたら、球団関係者を通じて連絡が来ます。会ってまず確認するのが『野球への未練』です。社会人野球であれ、軟式野球であれ、現役を続けたいというのであれば、残念ですがお手伝い程度しかできない。それはファーストキャリアにまだ続きがあると思っているということですから。私が支援するのはあくまでセカンドキャリアです」
プロ野球選手は、幼い頃から野球漬けの日々を送っており、社会経験のない選手が多数を占める。
「だからこそ、戦力外となった選手は不安を抱える。“俺は野球以外、何もできないんじゃないか”とネガティブ思考に陥ると、野球に関連する仕事にしか就くことができない。間違った選択とは言いませんが、そこから真の成功が得られるかといったら……」
実は今回、積極的に元プロ野球選手を採用していると聞いた企業に取材を申し込んだところ、苦笑交じりにこんな回答が返ってきた。
「確かに以前は、実験的に採用していました。しかし、採った全員が野球の世界に帰っていきました。現在は採用を見合わせています」
プロ野球での競争に敗れた選手が、夢の世界への未練を断ち切れないままでいれば、不幸な結果が生まれることもあるだろう。「第2の人生のスカウト」たちは、彼らの心強いサポーターになろうとしている。
(文中敬称略)
※週刊ポスト2017年12月1日号