一般の客席からトライアウトの様子を見守っていたのは、大手スポーツジム「ゴールドジム」の福岡地区クラブマネージャー・重松大だ。彼は選手に直接、声はかけず、ノートに名前と特徴をメモしていた。
「すでに元プロ野球選手に、ゴールドジムベースボールクラブでプレーしてもらっていますし、ジムのトレーナーとしての採用もしています。やっぱり、鍛えられた身体のトレーナーのほうが、会員の方に対する説得力がありますから。うちのような業種は、プロ野球選手に最適です」
トライアウトに参加した選手は、自分の出番が終われば各々、帰路に就く。マツダスタジアムの外では、縦縞のスーツにショールを首に巻いた若い男性が選手たちにパンフレットを配っていた。声をかけると、
「ズバリ、スカウトです」
と明快な回答。プロ野球選手を不動産販売の営業マンとして採用したいという。
「今回、初めてトライアウトに来ました。同業他社で元プロ野球選手が活躍しているケースがあるんです。ぶっちゃけ、営業職って、大事なのはガッツですよね。小さな頃からコツコツ野球をやってきて、いろんな試練に耐えてきた野球選手にはそれがある。業界のことはゆっくり覚えてもらえたらいい。不動産業はインセンティブがあって、能力に応じて年収は上がる。普通に頑張ってもらえれば、年収1000万円ぐらい余裕でいけます!」