『ハワイの若大将』(1963年)で若大将が歌った『DEDICATED』は、加山が学生時代に作った曲である。後日、『恋は紅いバラ』のタイトルでリリースされると25万枚を売り上げた。
「その頃はまだ電車で撮影所に通っていて、なぜか僕が乗っている車両だけ混むようになったんです。仕方ないので隣の車両に移ると、そこも混み出して。周りからは“人気が出てきたからだ”と言われました。人気ってそういうものなんだと思いました」
その後も映画とともに、数々のヒット曲を世に送り出していく。1965年の『エレキの若大将』で歌った『君といつまでも』は350万枚という驚異的な売り上げを記録。その年、加山は日本レコード大賞の特別賞を受賞し、翌年、紅白歌合戦に初出場する。加山が「幸せだなぁ」と歌いながら人差し指で鼻を触る仕草は、若者の間で大流行した。
「若大将になるために生まれてきたのかな」としみじみ語る“現代の若大将”は、平成の世でも色褪せることなく人々を魅了してやまない。
■取材・文/戸田梨恵
※週刊ポスト2017年12月1日号