1977年10月、ロンドンの国際戦略研究所(IISS)での演説で彼はこの戦略を披瀝して、関係各国に深い感動を与え、その後NATOの政策として採用され実施された。結果、ソ連側が核軍縮を持ち出し、SS全廃が実現したのだ。
安倍首相がまず言及すべきは、敵地攻撃能力の保有だ。自民党の検討チームは今年3月に「直ちに検討開始を」と提言し、8月には小野寺五典防衛相や岸田文雄政調会長も前向きな検討を口にした。だが、肝心の安倍首相は「具体的な検討を行う予定はない」と口を濁している。一国のリーダーこそ、率先してこの議論を俎上に載せるべきである。
さらに言えば、核武装の議論も始めるべきだ。
日本人の“核アレルギー”は強く、2006年に当時自民党の政調会長だった中川昭一氏が「(日本に)核があることで攻められる可能性が低い、あるいはない。やればやり返すという論理は当然あり得る」と述べただけで、野党ばかりか自民党内からも激しい非難を受けた。
当時は米政府も日本の核武装には否定的で、ワシントンからライス国務長官が急遽訪日し、日米同盟は核やミサイルの挑戦に耐えられると確約したほどである。
だが、最近の北朝鮮の暴走が続く中、米国メディアには「日本が核武装に向かっている」と言い切る論調や社説が多くなってきた。バード大学教授でハドソン研究所研究員のウォルター・ラッセル・ミード氏は9月5日付ワシントンポスト紙で、日本の核武装論をめぐる米国政府内の見解は分かれていると指摘した。