一方で、がんを放置することにはリスクもある。
72歳の富田聡さんはステージIIの大腸がんが発覚したが、本人の意思で治療を行なわなかった。血便が出るたび、腹部にギリギリと締め付けられる痛みがあったが、短時間で収まるためあまり気に留めなかった。
やがて腫瘍が腹部の皮膚に転移すると、今度は臭いに悩まされるようになった。
「痛みまでは我慢できたんですが、お腹から膿が出てきて部屋中に腐った臭いが充満するようになると、耐えきれず皮膚がんだけ切除しました」(富田さん)
がんは成長を続けると、やがて腐って形が崩れ、皮膚を突き破ることがある。富田さんのような状態に到ることは、手術や抗がん剤治療を行なっていればほとんど起こらない。
◆「逃病」で幸せな最期迎えられるの?
このように「逃病」を続けていくと、どのような最期を迎えるのだろうか。
自らも10年前に顎の下にしこりを発見し、「これは、がんだ」と直感しながらも、その後精密検査を受けず「逃病」を選んだ社会福祉法人「同和園」附属診療所の医師・中村仁一氏(77)がいう。