国内

警視庁監察係 素行不良の警察官を炙り出す方法

組織防衛が監察係の最大の任務(時事通信フォト)

 警察官の不祥事が止まらない。警察庁のまとめによると、2016年の1年間に不祥事で懲戒処分を受けた警察官は266人に上る。そのうち、逮捕者は81人で、前年より9人増えている。処分別では「異性関係」が94人。さらに内訳は「盗撮21人」、「強制わいせつ20人」「セクハラ17人」だった。「窃盗・詐欺・横領等」は61人。飲酒運転などの「交通事故・違反」は36人に上った。部下へのパワハラなど「規律違反等」は17人にも及ぶ。

 こうした「素行不良の警察官」を取り締まるのが「警察の警察」として恐れられている「監察官」たちだ。TVドラマなどの脇役として登場する監察官だが、実情はほとんど知られていない。記者会見でも余計なことは言わず、マスメディアの取材を受けることは、ほとんどない。このほど上梓した『警視庁監察係』(小学館新書)で、知られざる組織の内幕を描いた警視庁担当記者でジャーナリストの今井良氏に話を聞いた。

 * * *
──そもそも、監察係をテーマにしようとしたきっかけは何だったのか。

今井:警視庁を担当していて最も得たいが知れない集団と感じていたのが、警務部人事一課に所属する監察係だった。非違事案(警察官の不祥事)レクチャーの際に窓際にずらりと並ぶ監察係の面々はいずれもダークスーツに白いワイシャツ姿でみなロボットのように見えた。普通の警察官は仲良くなれば、雑談もするし、飲食を共にすることもある。しかし、監察係だけはそういうことが全くあり得ない。とにかく謎だらけだった。

──監察係の位置づけは。

今井:全国47都道府県警本部のうち、4万3000人を擁する警視庁は言うまでもなく日本最大の警察本部だ。その警察庁の数ある部門の中で人事を司り、庁内一のエリート集団とされているのが警務部だ。警務部には人事一課と人事二課が置かれていて、警視庁本部、102の警察署全ての警察官の人事を担当している。彼らは管理部門ということもあり、刑事部門などの警察官と違い、犯罪捜査にあたることはなくデスクワークが中心だ。だが、唯一の現場部隊が存在する。それが監察係だ。名称からも想像されるように、この係はいわば素行不良の警察官を懲戒するセクションで、警視庁内では“警察の警察”として恐れられている存在だ。

 ある現役の警視庁刑事などは「監察に接触されたら警察官としての人生は終わる」と声を潜めて言うくらいだ。

──どうやって素行不良の警察官を炙り出していくのか。

今井:もちろん身内や外部からのタレコミの場合もあるが、日ごろから「あの警察官はよく酒を飲むらしい」「最近、急に羽振りがよくなった」「どこそこの女に入れあげている」といった情報を集めている。そして、ある程度の情報を集め、分析した結果、シロではないと判断したら、対象者に気付かれぬよう行動確認したり、事実関係を裏付ける決定的な証拠となる写真や文書を手に入れる。それらが整った時点で上長を経由して本人に出頭要請をする。ターゲットにされた警察官に拒否権はない。そして、取り調べの結果、本人が認めたら、速やかに対象者の処分を行い組織の綱紀粛正を図るのだ。つまり、組織防衛が最大の任務と言っていい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
被害者の村上隆一さんの自宅。死因は失血死だった
《売春させ、売り上げが落ちると制裁》宮城・柴田町男性殺害 被害者の長男の妻を頂点とした“売春・美人局グループ”の壮絶手口
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
突然の「非常戒厳」は、国際社会にも衝撃を与えた
韓国・尹錫悦大統領の戒厳令は妻を守るためだったのか「占い師の囁きで大統領府移転を指示」「株価操作」「高級バッグ授受」…噴出する数々の疑惑
女性セブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン