ビジネス

なぜトヨタは先端技術を持ちながら純EVを量産しないのか

ハイブリッドカー「プリウス」に代表されるトヨタの電動車両

「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズとともに世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」が登場したのは1997年12月のことだった。

 それから間もなく20年が経とうとしている今、世の中はバッテリー式EVの話題で持ちきり。その中で、世界有数の自動車大国である日本はEV化で出遅れたとしばしば評されている。なかでもプリウスを生み出したトヨタは「ハイブリッドにこだわりすぎてEVを軽く見ていたのではないか」と、批判を浴びせられている。

 そんなネガティブイメージを払拭したかったからなのか、トヨタは11月下旬、ジャーナリストやアナリストなどを集め、電動化技術説明会なるイベントを行った。

 説明会が行われたトヨタのショウケース、お台場の「メガウェブ」の一角には、トヨタの代表的な電動車両が並べられた。ハイブリッドカーのプリウス、充電可能なプラグインハイブリッドカーの「プリウスPHV」、水素で電気を起こしながら走る燃料電池EVの「MIRAI(ミライ)」、そして2012年に少量をリリースしたバッテリーEVの「eQ」の4台である。

 その中で、電動化技術に携わるエンジニアたちが、トヨタの電動化戦略の骨子、およびEVづくりの3大要素技術、すなわちバッテリー、モーター、パワー制御の各分野について、トヨタの技術開発の先進性について力説した。

 だが、中身については目新しいものはなし。主軸はハイブリッド技術で、プリウスのシステムが第1世代から現行モデルである第4世代までのあいだにどれだけ性能と生産性が上がったかということを、部品を展示することで示しただけであった。

 電動化に関するトヨタの将来技術で最近話題になったのは俗に全固体電池などと呼ばれる固体電解質リチウム電池だ。

 これは現在のリチウムイオン電池に置き換わる次の一手と期待されているもののひとつ。性能がよく、耐久性に優れるものを作れる可能性があることから世界の電池メーカーが開発に注力している。トヨタは自動車に適したスペックに落とし込んだ固体電解質リチウム電池を開発中と報じられた。

 会見では当然、この電池に関する質問も飛んだ。展示やプレゼンで次世代電池に関する具体的な言及がなかったからだ。トヨタのエンジニアはまだまだ課題が多々残っているとしながらも、2020年代前半には何とかなるのではないかという実感を持っていると語った。説明会のなかで語られた将来の技術的なビジョンはこのくらいだった。

 このように、中身としてははなはだ薄いものであった電動化技術説明会。今の時期にトヨタがこれを開催したのは、もっぱら電動化技術で後れを取っているわけではないということをアピールするためで、それ以上の意味合いは薄い。

 だが、見るべきものがまったくなかったかといえば、そんなことはない。展示されていたトヨタの市販車のEV部品は、押しも押されもしない世界最先端のものだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン