芸能

姫乃たま 地下アイドルの炎上とガチ恋問題を総括

 2010年代前半にアイドルブームが始まったとき、現場へ足を運ぶようになった人たちは、その多くが今もアイドルファンを続けているようです。私のファンも、ずっと応援し続けてくれています。8年も地下アイドルを続けているため、30代だったファンは40代に、40代だった人は50代になりました。

 ファン歴が長い人たちの中には、そろそろ介護が主要な話題になる未来を心配している方もいます。活動してきた日々の長さと、もう昔には戻れないのだなという実感が湧いてきます。それでもみんな変わらず応援してくれているのですが、今年は「ガチ恋」を拗らせてしまった人もいて、悩ましい一年でもありました。

「ガチ恋」とは、アイドルに本気(ガチ)で恋をしてしまうファンを指します。アイドルファンなんて、みんなアイドルに恋しているんじゃないの? と思うかもしれませんが、実際には少し違います。

 特に地下アイドルは距離が近い分、ファンからの応援と絶妙な線引きによって支えられています。応援の気持ちには確かに「恋」と呼べる感情も含まれていますが、本気で交際しようと考えているわけではありません。ファンからの線引きがなくなると地下アイドルは活動自体が保てなくなって、好きだったはずの彼女ごといなくなってしまうからです。

 地下アイドルのファンには圧倒的に独身の人が多くて、わざわざ「結婚はもうあきらめているから」と明言する人も時々います。だからといって誰かを好きになることまであきらめているわけではありません。彼らに人を好きになることの楽しさを忘れないでいてもらうことが、地下アイドルの仕事なんだと思います。

 しかし、最終的にひとりひとりの恋人にはなれないことが、この仕事の難しいところです。ガチ恋は楽しいものだと思いますが、拗らせてしまうと誰もが苦しんで精神をすり減らしていきます。

 私はアイドルファンに限らず、生きづらい人のために活動したいと思っていて、これまでも私を好きでいてくれる人の傷が少しでも減ったらという気持ちでやってきました。それが今年は、ファンの人をガチ恋にさせて苦しい思いをさせてしまったことで、いままでの活動の仕方が間違っていたのではないかとひどく悩むことになりました。

 しかし、活動自体を辞めようとしたことで、純粋にファンとして楽しんでくれている人たちを悲しませることが、最もしてはいけないことだと思い出しました。新しい年はまた気持ちを持ち直して、ファンの人たちと楽園のような現場をもう一度つくっていきたいです。そしてすべての地下アイドルと、ファンの人たちが、穏やかで幸せな年になることを願っています。

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