ビジネス

山一證券 破綻翌年に編んだ社史に込められた忸怩たる思い

会見での社長の涙も印象的だった(時事通信フォト)

 企業の歩みには輝かしい成功だけでなく思い出したくない失敗もある。そんな「負の歴史」と向き合い、社史に克明に記す企業もある。

 4大証券の一角を占めていた山一證券が破綻したのは、1997年11月24日だった。その歴史を巡ってさまざまな書籍が発売されているが、実は同社の社史編纂委員会でも破綻から1年後の1998年11月に『山一證券の百年』をまとめていた。

 冒頭の「刊行にあたって」は、次のような書き出しで始まる。

〈平成九年四月一五日、山一證券は創業百周年を迎えた。その直後に検察の強制捜索が入り、続いて経営首脳陣の交代、役職員の逮捕となり、さらに営業休止・廃業へと事態は急転した〉

 100周年と廃業が重なる中、正式な社史の編纂も中止となったが、刊行を望む声を受けて、大内幹造・副会長(破綻当時)を委員長とした社史編纂委員会が制作を続けた。

“しんがり”を務めた編纂部隊の忸怩たる思いは「あとがき」にこう書きこまれている。

〈山一證券の歴史に次の頁はない。ここで会社百年の事蹟を形に遺すことは、企業としての一つのけじめにもなると思う。

 創業百年にして廃業せざるを得なくなった真因を解明・記述したかったが、時間的に困難であり、また、山一の現在置かれている立場等を考慮し、断念せざるを得なかった。最後の一年間については、最終章に年表形式で付加することとした。すべての判断は後世の歴史に委ねたい〉

 こうして世にも珍しい、破綻企業の社史が生まれた。

※週刊ポスト2018年1月12・19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン