このNHKのCD全集もそれに続くもの。第1集には『黄金餅』『芝浜』『野ざらし』等、談志40代の高座が5席収められている。ディスク5に収められた先代正蔵との対談も貴重。
DVD『落語とは、俺である。』(ポニーキャニオン)は談志が2007年にインターネット通信制大学で配信した映像講義「落語と文化・文明論」の商品化。竹書房より書籍版も刊行。落語とは何かを談志ならではの切り口で明解に論じている。
生前はその破天荒な言動ばかりに注目が集まった談志だが、亡くなってからようやく「落語家」として客観的に評価されるようになった。「立川談志として生きる」ために彼が演じた強烈なキャラの向こう側にあった「素顔の談志」が見えてきたのである。
談志は「歴史上誰よりも落語を愛し、深く考えた男」であり、「落語を滅ぼさないための闘いに人生を賭けた男」であり、何より「天才落語家」だった。彼が残した大量の音源と映像は、それを教えてくれる。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年1月26日号