2015年末、イタリアに行った時は当時42歳の私でさえ、物価の高さにビビった。何しろ、2人でレストランに行き、各自ビール(小瓶)2本を飲み、サラダ、肉料理、パスタでも1皿ずつ頼めば1万円するのだ。日本であれば、これは5000円だろう。
旅行中、毎食1万円を用意せざるを得ない状況には正直「イタリア人、なんでこんなに金持ちなの? 負けたわ……」と思うことしきりであった。
さて、実際に観光庁が行なっている取り組みは「旅に出たい、出よう」という気持ちへの働き掛けを行なうために旅行の達人が旅行の魅力を学生に対して語る「若旅★授業」である。そもそもこうした講座に来る学生はすでに海外旅行が好きな人間なのでは? 観光庁の分析もかなりヘンである。
「SNSで発信したくなるようなネタを提供することが、若者の旅行を後押しする可能性がある」
いわば「インスタ映え」があるスポットなどを紹介しろ、ということなのだが、本気で海外旅行に行く人間を増やしたいのであれば、日本の現状に不満を持つ人間に、「いかに海外旅行がお得か」を示すことの方が肝要である。
まずは、日本では体験できない快楽がいかに多いか、或いは日本で体験できることが激安でできる、ということを伝える。それこそマッサージがカンボジアでは激安であることや、アメリカ南部では生ガキがとんでもなく安いことなどでもいい。
また、著名なイタリア料理人などに顕著だが、こうした人物の多くは若い頃イタリアで修業をした経験を持つ。その時の体験がいかに現在の高収入に繋がっているか、など実利のある話を語ってもらうのだ。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2018年2月9日号