国内

「若者の海外離れ」主張したい観光庁、そのご都合主義的分析

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

「若者の○○離れ」といえば、ネットニュースでは定番の人気テーマだ。○○にはクルマ、パソコン、タバコ、果物、外出など様々なものが当てはめられてきた。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、観光庁が「若者の海外旅行離れ」を食い止めるために取り組んでいる様々な施策について論考、解説する。

 * * *
 ネットがざわめく「若者の○○離れ」の新顔が登場した。観光庁が「若者の海外旅行離れ」を食い止めるための有識者検討会を作り、対策を練るのだという。若者の海外旅行離れの理由は時事通信が報じたところでは「若者がショッピングセンターや温浴施設など近場で休日を過ごす傾向にあることや、スマートフォンのゲームなど室内での趣味が増えたことなど」だ。「スマホゲーム」部分を「プレイステーション」に替えれば20年前でも通じるロジックである。

 そして、どれだけこの現象が進んだかの数字を見ると、この検討会の無意味さが露見される。

〈1996年の日本人の出国者数は1669万人で、うち20代は463万人。2016年は全体が1712万人とほぼ横ばいだが、20代は39%減の282万人〉

 181万人も減った! と勝ち誇ってはいるが、1996年の20代である1967~1976年生まれが1953万人いて、2016年の20代である1987~1996年生まれは1238万人。海外旅行に行った経験のある20代の割合は1996年が23.7%で、2016年が22.8%。そこまで下がっていないのである。

 しかも、2000年以降、G7各国で名目賃金が上がり続ける中、日本だけは横ばいかつ唯一のデフレ国でもある。発展途上国はともかく、物価の高い先進国に行くには日本の若者は相対的にキツい状況にある中、よくぞ0.9%減でとどまったと考えた方がいいだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン