西部先生の遺作となった『保守の遺言』(平凡社新書)には、明瞭に自裁の決意が述べられている。先生の中では全てが想定されていたことだったのだ。同書最期の言葉はご親族らに向けられた「グッドバイそしてグッドラックと言わせていただきたい」である。しかし、私のような暗愚な大衆に毛の生えたような程度の人間は、いったいどうしていったら良いのだろうか。

 常識を喪失したより醜悪なゴロツキとペテン師と商売屋ばかりが蔓延る界隈の中で、私はどう生きていったら良いのだろうか。無論私だけイノセンスを気取っているのではない。私だってゴロツキの一種である。

 しかしそれは、西部邁という存在が遠くにいる事を前提として、その辺境のさらに端っこで辛うじて成り立つ芸当にすぎない。多摩川を去って帰路、小一時間自問した。が、西部邁先生の代替者の名を、現在の保守界隈に見つけだすことはどうしても出来なかった。

 私には、感傷や衝撃よりも危機感の方が圧倒的に強い。

◆西部邁氏の生涯
1939年 北海道生まれ。
1958年 東京大学入学。同年12月に結成された共産主義者同盟(ブント)に参加。
1960年 六〇年安保闘争を指揮。安保後、運動から離れる。
1964年 東京大学経済学部卒業後、同大大学院進学(経済学研究科修士課程修了)。
1986年 東京大学教養学部教授に就任。
1988年 宗教学者・中沢新一氏を学部助教授に推薦するも、教授会で否決され、東大を去る。以降、保守論客として活躍。『朝まで生テレビ!』出演などで人気を得る。
1994年 言論誌『発言者』を刊行(『表現者』の前身)。
2003年 イラク戦争に際して、「大義なし」として米国、並びに同国に追従する日本を痛烈に批判。
2018年 逝去。享年78。

【著者プロフィール】ふるや・つねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。日本ペンクラブ正会員。主な著書に『左翼も右翼もウソばかり』『草食系のための対米自立論』。最新刊は『日本を蝕む「極論」の正体』。

※SAPIO 2018年3・4月号

関連記事

トピックス

不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
多忙の中、子育てに向き合っている城島
《幸せ姿》TOKIO城島茂(54)が街中で見せたリーダーでも社長でもない“パパとしての顔”と、自宅で「嫁」「姑」と立ち向かう“困難”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《スクショがない…》田中圭と永野芽郁、不倫の“決定的証拠”となるはずのLINE画像が公開されない理由
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
千葉県成田市のアパートの1室から遺体で見つかったブラジル国籍のボルジェス・シウヴァ・アマンダさん、遺体が発見されたアパート(右・instagram)
〈正直な心を大切にする日本人は素晴らしい〉“日本愛”をSNS投稿したブラジル人女性研究者が遺体で発見、遺族が吐露した深い悲しみ「勉強熱心で賢く、素晴らしい女の子」【千葉県・成田市】
NEWSポストセブン
女性アイドルグループ・道玄坂69
女性アイドルグループ「道玄坂69」がメンバーの性被害を告発 “薬物のようなものを使用”加害者とされる有名ナンパ師が反論
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン