国内

フードロス問題 廃棄食品を貧困家庭へ届けるマッチング活動も

フードロスと貧困を減らすフードバンク活動が進行中

 農林水産省の発表(2017年)によれば、日本国内で「まだ食べられる」にもかかわらず捨てられている食品は、年間およそ612万t。1300万人の東京都民が1年間に食べる量に匹敵し、日本人1人当たりに換算すると、毎日茶碗1杯分の食品を捨てている計算になる。そして今、日本のフードロスは「貧困」とセットで考えるべき時代に来ている。

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2015年)によると、子供の貧困率は13.9%。年間621万tの食品が捨てられる裏で、300万人もの子供が飢えているのだ。

 とりわけ母子家庭は、所得200万円以下の世帯が4割を占め、大半がいくら働いても貧困から抜け出せない“ワーキングプア”である。

 捨てられる食品を、貧困家庭に届けられないか──。そんな思いから始まった活動が「フードバンク」だ。この活動は、まだ食べられるのに廃棄される食品と、それを求める人々を“マッチング”するもの。日本で初めてフードバンクを設立した「セカンドハーベスト・ジャパン」の広報担当者が語る。

「食品企業を中心にスーパーや卸業者、個人などから、充分食べられるけれども包装の破損・印字ミスで販売に回せない食品や売れ残りの提供を受けて、ボランティアと共に食べ物を必要とするかたたちに届けています」

 届け先となるのは、主に福祉施設や児童養護施設の子供たち。DV被害者のためのシェルターや路上生活者も対象となる。

「生活が困窮して、“今月の食費が足りず、子供に食べ物を与えられない”という個人の世帯にも支援をしています。食品を調理してお弁当を作ったり、炊き出しをすることもあります」(広報担当者)

 同団体の食品取扱量は、年間2000~2500t。2016年度はおよそ470万食相当を人々に提供した。

 1年間に廃棄される食品量からすればわずかなものだが、同団体は、フードバンク活動がフードロスと貧困を減らす一助になると信じている。

「病気になったら病院に行ける、犯罪があれば警察に駆け込める。同じように、食事に困ったら食事の支援をしてもらえる場所があるべきです。そんな社会をつくるために、私たちはこれからも活動を続けていきます」(広報担当者)

 いびつな流通ルール、賞味期限信仰、貧困…。フードロスは、現代日本を覆うさまざまな課題を映し出している。

※女性セブン2018年3月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン