芸能

舞踊家・田中泯 「お芸術」は特権階級のやること

俳優としても活躍する舞踊家の田中泯

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優としても活躍する舞踊家の田中泯が、ドラマで立川談志を演じたときのこと、鬼平犯科帳で中村吉右衛門と対峙したときについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 田中泯は二〇一三年、NHK-BSプレミアムのドラマ『人生、成り行き 天才落語家・立川談志ここにあり』で談志役を演じた。

「談志さんは知的エリートですね。悪い意味じゃなくてね。

 エリートなんだけど、人間が好きだったんだと思います。人間の何もかもを含めて。ただ、エリートであるために根底には階級意識があったんじゃないかな。だから、底辺の人たちを自身の芸の道の中心に据えてやることができたんだと思います。

 そこで彼は『落語とは業の肯定だ』と言うわけですが、もし今生きていたら議論したいですね。『なに日和ったこと言ってるんだ』って。彼の落語を笑って聞いていられる人ならいいんです。でも、本当にその業を背負った当事者が聞いたら、どう思うか。たぶん痛みが生まれるんじゃないでしょうか。彼ならそういう人を救う落語もできたはず。それが『業の肯定』で考えが止まって、その業を生む社会を崩すところまで行かなかった。

 談志さんと議論して、結論が導かれるとは思いません。でも、そういう気持ちを無くしたら僕がやっていることも『お』の付いた『お芸術』になってしまう。それは特権階級のやることです。

 多くの有名人は経済的にリッチになって出世して満足かもしれませんが、そんなのは二十世紀で終わりですよ。僕はそこに爆弾を仕掛けたい。師匠の土方巽は『人間には階段を上に昇りたい欲求がある。でも、ダンサーは階段のどのステップでも踊らないとダメだよ』と言っていました。それを聞いて、僕はそう生きようと決めました」

 二〇一六年、中村吉右衛門主演『鬼平犯科帳』最終作となる『THE FINAL 雲竜剣』では吉右衛門の鬼平と最後に対峙する剣客に扮した。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン