こうした現状は、五輪開催熱が冷めた今の江東湾岸エリアの市況を象徴している。また、ここ5年間でバブル化した東京のマンション市場の縮図でもある。特にタワーマンションは値上がり益狙いの転売目的で購入する個人投資家が多く、引渡しと同時に購入額の1.2倍程度で売り出すケースが多発している。しかし、スカイズ タワー&ガーデンに限らず、高値で頻繁に取引が成立している物件は多くない。
そういう現実を見ていると、局地バブルで値上がりした都心や城南、湾岸のマンション市場は、下落に転ずる直前の崖っぷち状態にあるのではないかと見えてしまう。特に個人投資家や外国人購入者比率が高いと推定できる江東湾岸エリアのタワーマンションは、一見価格崩壊の危機が迫っているようにも思える。
ただし、現在は世界的な好景気にあると言われている。日本でも実感はわかないが「戦後最長」の経済成長を続けているという。こういう時に、不動産価格は下落に転じるものではない。また、今は金利が史上最低水準。法人でも個人でも、不動産を担保に融資が受けやすい状態だ。
そういう状況を考えれば、私には2018年の間は不動産市場が大きく崩れることはなさそうに思える。しかし、実態はスカイズ タワー&ガーデンのように、かなり危うい市場の均衡状態といえる。
そのまま2019年に入ると、10月には消費税が上がりそうだ。マンション市場の場合、消費税の増税前は「駆け込み需要」というものがやってくる。簡単に言えば新築マンションがよく売れる。そのムードが中古市場にも伝染する。
そうなれば2019年も何とか崩落を食い止められる可能性がある。しかし、市場の現実は今よりも悪くなるだろう。“マグマ”が溜まっていくのだ。
そして、2020年に五輪が開幕。多分、2020年は年明けから日本は五輪ブームに包まれる。再び湾岸エリアに注目が集まる。日本の不動産市場は「空気」で動きやすいから、湾岸エリアはまたしても五輪に救われる。しかし、マグマはどんどん膨らむ。
そして、五輪閉幕。日本中が「祭りの後」状態となる。
ここ2回の五輪の開催地で会ったリオデジャネイロとロンドンは、五輪閉幕後には不況がやってきたという。盛り上がった需要が元に戻るのだから、人々の気持ちも萎むだろう。
祭りが終わり、多くの人が現実を眺める。
そうでなくても、都心のマンションは投機や投資で買われた住戸が空き家になって大量に積み上がっている。東京五輪が終わった江東湾岸エリアでも、今よりも数千戸規模でタワーマンションが増えている。江東湾岸エリアよりも交通利便性が高い、対岸の中央区晴海には1万戸以上の選手村物件の住宅が市場に供給される。
東京のマンション市場は新築、中古とも、今でも供給過剰である。今は多くの人が、その現実をしっかりと見ていないだけ。なぜなら「2年後には五輪じゃないか」という潜在意識があるから。
しかし、五輪が終われば現実に引き戻される。そして、その時は今よりも供給過剰になっている。
すでに「王様は裸」なのだ。見えている人には見えている。このように叫んでも、大多数の人にはまだ見えていないが、五輪後には、それがほぼすべての人にも見えるようになるはずだ。
湾岸エリアのタワーマンションは、恐ろしい事態がやってくる前に売ってしまったほうがよいだろう。