●『anone』(日本テレビ系)

 こちらも前作『カルテット』で評判をとった脚本家・坂元裕二氏によるオリジナルだけに、注目が集まりました。でも……リアリティは? と尋ねたくなることしばしば。疑問がわいてきてドラマに没入できず醒めてしまうことの繰り返し。

 今どき偽札をATMやコンビニで使ったら映像に撮られてすぐバレるのになぜ作る?

 偽札だけでない。幼児虐待、難病、余命宣告、放火……と設定がとにかく極端。刺激のてんこ盛り。訳ありの人物があまりに多く、しかしそのわりに詳細が説得力をもって伝わってこない、もどかしさがありました。

 一般的に「分かりにくい」という声が多かったことは事実のようですが、そのうち「転倒」も生まれてきた。「よく分からない」「複雑さ」=価値と語られるように。たとえば…「分かりにくく感じたのは、ドラマを毎話楽しむために欠かせない“具体”を小出しにしていたためで、それは作品と作品を楽しみにしている視聴者への愛情表現なのだろう」(「ザ・テレビジョン」2018年3月21日)。

 まあ、そうした味わい方も無いとは言えないでしょう。例えば映画や文学を読み手や観客がわざわざお金を払い時間を費やして、理解する努力を重ねてじっくりと味わう、という意味あいにおいては。

 しかし、テレビドラマではどうでしょうか? 日常空間で気楽にチャンネルをあわせて何気なく視聴するテレビという媒体において、分かりにくさ、極端さ、作者のこだわりをどこまでどのように処理すべきだったのか? 「テレビドラマ」にフィットする表現スタイルとはいったい何なのか? そんな貴重な問題提起をしてくれた点で評価したい挑戦的作品でした。

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