国内

中国人バスツアーのガイドが告白「観光客は洗脳すればいい」

中国人観光客向けバスツアーのガイドをする西谷氏

 春の訪れとともに、日本の桜を一目見ようと、中国大陸からは“爆買い”ならぬ“爆花見”観光客が日本に大挙してやってきている。マナーの悪さなどが問題視されることもあるが、彼らは日本でどのように過ごし、何を感じているのか。

 『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)を上梓したジャーナリストの西谷格氏は、中国人向けの訪日ツアーに新人ガイドとして潜入。ツアー客を実際に引率しながら、彼らの思考様式とプロのガイドの“対応法”を目の当たりにしたという。

 ***
 私は爆買いツアーのガイドとして、先輩男性ガイドの張さん(仮名)とともに、都内の大型ショッピングモールやアウトレットなどをめぐるバスツアーに同行していた。張さんと家電量販店の喫煙所で雑談しながら、ツアーガイドのコツを教えてもらった。

 「この仕事はとにかく、客をいかに洗脳するかなんですヨ」

  洗脳という言葉に驚いたが、言わんとすることは理解できた。

 「例えばこの磁気ネックレス、中国のガイドはみんなこれ使っているんですよ。1本3万円ぐらいですが、ガイドなら1万円ちょっとで買える。で、お客さんが1本買うと9000円のバックがもらえる。『私も使っていてすごく効きますよー』といえば、みんな買っちゃうんですよ」

  そう言って、ニヤリとしながらシャツの襟の間から銀色の金属の輪をつまんで見せた。張さんの知り合いの中には、この磁気ネックレスの販売に特化したガイドを行ない、一財産築いた者もいるという。確かに、20人が買えば1日で20万円近いバックが入るのだから、儲けは大きい。

 「とにかく、こちらの言っていることを信じさせる。これが大事なんです」

  また、時間にルーズな中国人観光客への対処法も教えてくれた。

 「『集合時間に遅れたらタクシーで来てください。日本のタクシーは高いので、1回遅れたら2万円ぐらいかかりますよー』って言うんです。みんなお金払うのは嫌だから、こう言っておけばまず遅れない。遅れた人がいても、絶対に待っちゃダメなんです。1回でも待つと、みんな『じゃあ次は私も遅れて来よう』って考えるから」

  さすが、中国人の思考回路を知り尽くしている。中国人に対しては接客業であっても、ある程度割り切ってシビアに対応しないと、ドンドンつけ込まれてしまうのだ。

【プロフィール】にしたに・ただす/1981年、神奈川県生まれ。フリーライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。2016年の春、日本で中国人観光客向けのバスツアーガイドのアルバイトに従事する。ツアーガイドのほか、中国での潜入アルバイト生活について綴った『ルポ 中国「潜入バイト」日記』を3月29日に発売した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン