旧日商岩井時代から長年、米国ボーイング社の日本代理店を務めてきた双日では、同社の藤本昌義社長が以前こう語っていた。
「日本では、ビジネスジェットを所有しているとどこかお金持ちの道楽みたいに思われがちなんですけど、米国、それに私がかつて駐在したベネズエラでは、ちょっとした小金持ちの人たちはみんな、ビジネスジェットは持っている。
空港使用料や駐機料が安いということもありますが、定期便が就航していない地域でも自由にフライトを設定することが可能ですから、好きな時に飛んで帰ってこられるのは、多忙なトップにとって一度体験したら手放せなくなるはずです」
海外のエアラインは、定時に飛ばず遅延になることが日常茶飯事。その余波で下手をすると半日ぐらいは空港に缶詰め状態ということもあり、貴重なビジネスチャンスを失うリスクがある。
藤本氏自身、ベネズエラで現地の自動車製造・販売会社の社長を務めていた頃、傘下のディーラー社長たちがみんなビジネスジェットを持っていたため、ベネズエラ国内での国内線移動で、そのビジネスジェットをリース使用することがたびたびあったという。
もともと双日も、ビジネスジェットの事業には15年前の2003年に参入し、2005年からは国内市場で運航管理サービスを展開、「フェニックス・ジェット」というブランド名で、日本のみならず、のびしろが大きいアジア域内での需要獲得を表明していた。そんな中で、前述したようにANAHDとも今回、タッグを組んだというわけである。
ちなみに、双日がビジネスジェットを購入して社長が使うといったことは社内規定で禁止されているそうだ。世界中を飛び回る大手商社のトップ、それもボーイングをはじめとした航空機ビジネスに強い双日でさえこれだから、日本では大手といえども、サラリーマン経営者にビジネスジェット、特に乗り継ぎでなく日本発着の直行便は、やや縁遠い話だといえる。
大企業のサラリーマン経営者の場合、日本からの直行便はビジネスジェットでなくても、JALやANAなどの定期便のファーストクラスで事足りるだろう。ただし、こうした定期便に比べて機動性のあるビジネスジェットならば、時間を買う、つまり海外出張時の時間節約効果は期待できる。