注目すべきは、ゴースト血管が認知症や骨粗鬆症といった加齢に伴ってリスクが増す疾患の要因にもなり得るという点だろう。
正常な毛細血管は、壁細胞(外側)と内皮細胞(内側)の2重構造で安定を保っている。そのなかで重要な役割を果たしているのが、壁細胞から分泌される「アンジオポエチン-1」という物質である。この物質が内皮細胞どうしを強く接着させることで、毛細血管は強さを保てるのだ。NHKの番組にも出演した大阪大学微生物病研究所教授の高倉伸幸氏が解説する。
「しかし、『アンジオポエチン-1』は加齢とともに分泌が減少していくことが分かっています。その結果、内皮細胞どうしのゆるみと壁細胞の分離が生じ、毛細血管から酸素や栄養分が過剰に漏れ出してしまう。そうすると、毛細血管の維持に必要な酸素や栄養分が確保できなくなり、血管が次第にボロボロになって、最終的には消失。つまり、ゴースト血管になってしまうと考えられています」(同前)
これに伴い、ゴースト血管の周辺の細胞には、通常は血管を通して運ばれてくる酸素や栄養分が行き渡らなくなる。そのため、供給を失った周辺の細胞が壊死。それらの細胞で構成される臓器がダメージを受けることで、様々な重篤な疾患につながってしまうのだ。高倉氏が続ける。
「ドイツの研究チームの論文で、骨髄の中を通っている毛細血管が潰れると、骨粗鬆症を招くことが証明されています。また、皮膚や頭皮にゴースト血管が発生すると、シワや薄毛の原因になります。まだマウスの実験で確認されている段階ですが、ゴースト血管が肝機能の低下を引き起こすことも指摘されています」