このオフィスに1才2か月の女児を連れて出勤するママOLの安井麻倫子さん(29才)が笑顔で語る。
「保育園の空きがなく困っていた時に『子連れ出勤』を知り転職しました。電話対応中に子供がぐずっても誰かが面倒を見てくれて、多くの大人にかわいがられて人見知りをしない子に育っています」
子供を持たない同社社員の宮坂あずささん(28才)も歓迎ムード一色だ。
「以前勤めていた会社は周りのみんながライバルのような存在で社員同士の交流がなかった。今の会社のオープンで大家族のような雰囲気がとても楽しいです。繁盛期は社員の家族がオフィスに来て仕事を手伝ってくれるし、うちの実家にみんなで遊びに来たこともあります。私は一人暮らしなので、出勤してみんなに会って、同僚の赤ちゃんを抱きしめると家に帰ってきたような気さえしてしまう」(宮坂さん)
この流れは他の企業にも広がっている。例えば都内の一戸建て住宅にオフィスを置くインターネット広告会社『ライフファルム』も家族的な雰囲気を大事にしている。同社では子連れ出勤も認め、一戸建ての中に子供部屋を作っているという。『サイバーエージェント』でも同社のエンジニアたちが集まってシェアハウスをするなど、社員同士の絆はより強く、濃いものになっているのだ。
多くのOLが企業の“再家族化”を歓迎するのは、現代人が孤独を感じやすいためだ。1963年にOLという言葉を生み出した『女性自身』で、当時編集長をしていた櫻井秀勲さん(87才)が語る。
「核家族化が進んだ現在、地方から都市に出てきた人の多くは孤独や寂しさを抱えて暮らしています。加えて近年は晩婚化も進んでいる。彼女たちにとって会社は、寂しさを癒してくれる居心地のよい場所。今ルームシェアや昭和レトロ的な喫茶店が流行っているのと同じで、安心できる居場所が求められているのです」
OLと企業の距離が縮まったもう1つの理由は、“家族の会社化”が挙げられる。都内在住の2児の母・上野葉子さん(仮名・44才)が言う。